「4P分析」は、製品(Product)・価格(Price)・流通(Place)・販促(Promotion)をそろえて検討するための枠組みです。
この記事では、定義だけでなく、実務で使える手順やテンプレート、ミニ事例、注意点までを一つにまとめました。はじめての方でも運用しやすい形にしています。
全体像をつかみ、今日決めるべきことを明確にしましょう。
4P分析とは何?
4P分析は、製品(Product)・価格(Price)・流通(Place)・販促(Promotion)の4つを同じ土台で見直し、販売計画を整える基本のフレームです。
「何を売るか」「いくらで売るか」「どこで提供するか」「どう伝えるか」を一度に確認することで、戦略の矛盾点や抜漏れなどを早い段階で見つけることができます。
4P分析を行う目的
目的はシンプルです。全体の戦略と、現場で行う施策に矛盾が生じないようにすること。
たとえば「高品質で選ばれるブランド」を掲げるのに、「価格は常に値引き、広告は割引セール中心」この状態ではユーザーに本当の価値は伝わりません。
4Pを並べて確認すれば、どこにズレがあるのかが見えてきます。
もうひとつの狙いが買いやすさの設計です。
仕様は優れていても、価格表示が分かりにくい、扱っている店舗が少ない、申込の手順が長いなど、小さな障害が積み重なると、買う理由より「やめる理由」が強くなります。
4Pをひとまとめで見直すと、全体の課題を見つけることができ、ネクストアクションの立案に繋げることが可能です。
4Pの4要素と主な観点
4Pを漏れなく点検するために、最初に見る項目を決めておくと迷いません。まずは基本の枠をそろえ、必要に応じて列を足してください。
【4Pごとに確認する主な観点】
要素 | 何を見るか | そろえたい情報の例 |
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Product(製品) | 誰のどんな課題を、どう解決するか |
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Price(価格) | いくらで、どう提示するか |
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Place(流通) | どこで、どう届けるか |
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Promotion(販促) | 何を、どの媒体で、どう伝えるか |
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4P分析のやり方
手順を決めておくと、検討が止まりにくくなります。次の5ステップを基準に、担当と期限を決めて進めてください。
STEP1:目的・対象・判断指標を決める
例として、「個人向け月額プランの新規申込を増やす。見る数字は申込率と獲得単価」といった具合に、何を達成したいか、どの数字で良し悪しを判断するかを最初に固定します。
ここがぶれると、後の検討が散らかります。
STEP2:現状の4Pを同じ書式でまとめる
前の表に沿って、1ページで読める分量に整理します。金額は税抜・税込で揃え、期間も月次なら月次に合わせます。表の基準をそろえるだけで、比較が一気に進みます。
STEP3:顧客のつまずきと、方針との食い違いを見つける
行動データ(CVRや離脱率)と顧客の声を照らし合わせて、どこで止まっているかを確かめます。
例えば「導入に手間がかかるのに、広告では“すぐ使える”と謳っている」といった矛盾が見つかったら、まずそこを直します。戦略に合わせて情報を整えるだけで、申込率が動くことは珍しくありません。
STEP4:改善方針を短い言葉で決め、優先度をつける
「価格の表示を税込・月額に統一」「初回体験を2ステップに短縮」など、誰が読んでも同じ意味にとれる言い切りの文に落とします。
次に、効果(Impact)と手間(Effort)で優先度を決めます。やることが多いほど、短く明確な言葉が効いてきます。
STEP5:担当・期限・KPIをつけ、実行して検証する
施策ごとに担当者、期限、追う数字を決め、進行表で追いかけます。まず小さく試し、数字で確かめます。結果に合わせて手を入れれば、迷いが減り、前に進みます。
テンプレートとチェックリスト
はじめは1ページで十分です。下の「4Pキャンバス」をコピーして使ってください。公開・共有しやすい簡易版です。
【1ページで使える「4Pキャンバス」】
記入の項目 | |
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目的・対象・指標 | 例:新規獲得増/個人向け月額プラン/申込率・獲得単価 |
Product | 価値提案、機能・品質、ラインナップ、サポート/保証、差別化点 |
Price | 価格体系、表示ルール、割引条件、収益性(粗利/回収月) |
Place | チャネル(直販/代理店/EC/店舗)、在庫・供給、導入/配送の手間 |
Promotion | 一言メッセージ、媒体配分、クリエイティブの型、証拠(事例/数値) |
主要施策 | Web/広告/営業資料/価格/在庫・供給/プロダクト改善など |
KPI・担当・期限 | 例:申込率+3pt/広告:Aさん、LP:Bさん/来月末 |
【公開前に確認するチェックリスト】
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全体の方針と、個々の施策に食い違いはないか。
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数字の期間と単位はそろっているか。
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申込のつまずきに対する対策が、4Pのどこかに反映されているか。
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主要施策に担当・期限・KPIが入っているか。
4P分析で使えるデータソースと指標
はじめは「申込率」「獲得単価」「在庫・供給」「主要チャネルの到達」の4点を押さえるだけでも十分です。
より精度を上げたい場合は、次の表を参考にしてください。
【データソースと主な指標】
観点 | 主なデータソース | 指標・項目の例 |
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Product |
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Price |
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Place |
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Promotion |
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活用事例
実際の流れを短いケースで確認します。数字や手順は簡略化していますが、検討の順番の参考になります。
B2C:コスメの新色を早く広げたい
「敏感肌でも使える」「色持ちが続く」を中心に仕様を整理しました。価格は既存ラインに合わせ、セット購入を用意。ECを主力に、在庫は欠品を避ける配置へ。広告のメッセージは「低刺激・色持ち」に一本化し、動画と口コミで訴求。成果の確認には在庫回転と媒体別のCVRを使いました。
B2B:SaaSのトライアルから有料化を高めたい
オンボーディングの手順を見直し、導入の負担を減らしました。価格表示は月額と年額を分かりやすく整理し、年額の割引条件を明文化。直販に加え、導入支援ができるパートナー経由も併用。販促では「導入の手間が少ない」と一言で伝え、事例と比較表を添えました。KPIはトライアルから有料への転換率と獲得単価に設定しています。
4P分析の注意点とよくある失敗
最も多いのが、方針と施策の食い違いです。価値の出し方と価格・販促の表現が合っているかを、最後にもう一度確認してください。
次に多いのが、数字の基準がばらばらなこと。期間と単位を合わせるだけで、判断のスピードが上がります。
そして、最後に実行に進まないという問題。担当・期限・KPIをつけ、まず小さく試すところまでを一連の作業に含めましょう。
4Pと他フレームの違い・組み合わせ方
調査で使うのが3C分析(顧客・競合・自社の把握)、狙いを決めるのがSTP、具体策を設計するのが4P分析です。
全体を振り返るときにはSWOTで要点をまとめると整理しやすくなります。4PとSTPは行き来しやすい関係ですが、買い手が比べる基準に合わせることを共通ルールにしておくと迷いが減ります。
よくある質問
Q:4P分析とは?
A:製品・価格・流通・販促を同じ方針で設計するための整理方法です。
Q:テンプレはありますか?
A:本記事の「4Pキャンバス」をそのまま使えます。必要に応じて列を追加してください。
Q:4Pと3C・STP・SWOTの違いは?
A:3Cは状況把握、STPは狙い決め、4Pは施策設計、SWOTは要約と方向づけです。
Q:BtoBでも使えますか?
A:使えます。導入の手間や支援体制、パートナーの活用など、B2Bならではの観点をPlaceとPromotionに含めてください。
まとめ
4P分析は、全体の方針と現場の施策に食い違いが出ないように整える作業です。
最初に目的・対象・指標を決め、1ページに現状をまとめる。次に、つまずきと矛盾を見つけ、短い言葉の方針へ落とす。
最後に、担当・期限・KPIを付けて試し、数字で確かめる。小さく回すほど、判断の質が安定していきます。