STP分析とは、マーケティング戦略立案の基本フレームワークです。自社の商品・サービスを「どこの市場で、誰に向けて、どんな立ち位置で提供するか」を整理する手法で、Segmentation(セグメンテーション)・Targeting(ターゲティング)・Positioning(ポジショニング)の頭文字を取っています。市場を細分化して狙うべき顧客層を定め、自社の強みが活きるポジションを設計することで、競合との差別化や効果的なリソース配分が可能になります。
本記事では、STP分析の基本から具体的なやり方、すぐ使えるテンプレートを簡単にわかりやすく解説します。マーケティング担当の方は、自社戦略の見直しや新規事業計画にぜひお役立てください。
STP分析とは

STP分析とは、市場を顧客ニーズや属性で細分化し(Segmentation)、自社が注力すべきターゲット市場を決め(Targeting)、その市場における自社の立ち位置を明確にする(Positioning)ためのマーケティングフレームワークです。
競争が激しい現代市場では、「誰に何をどう提供するか」を明確にしないと自社商品が選ばれません。STP分析を導入すれば、マーケティング施策の軸がぶれなくなり、限られたリソースを効果的に集中させることができます。
STP分析を導入する目的
STP分析の最大の目的は、効果的なマーケティング戦略を立てることです。市場と顧客を正しく理解し、「どの市場で、誰をターゲットにすればよいのか」を明確にすることで、商談成立率の向上や売上拡大につなげられます。新規事業では最適な市場選定や商品コンセプトの策定に役立ち、既存事業ではターゲット見直しや競合に勝てる打ち出し方の再検討に活用できます。
例えば、新規事業の立ち上げ時には、まずSTP分析で市場を絞り込み、開発すべき商品・サービスの方向性を定めます。逆に既存事業が伸び悩んでいる場合にも、改めて市場や顧客のニーズを洗い出し、戦略の立て直しにSTP分析が有効です。
このようにSTP分析は、マーケティングの方向性を迷わないための羅針盤として機能します。誰に何を届けるかの軸が定まれば、ペルソナ設定やメッセージ開発、チャネル選定まで一貫した戦略を展開できます。
STP分析を活用するシーン
STP分析は様々なマーケティング場面で活用されます。代表的なシーンとして、新規市場への参入や新商品の企画段階が挙げられます。未知の市場でも、STP分析によって有望なセグメントを見つけ出し、効果的に資源を投入できます。
また、既存商品のテコ入れにも有効です。売上が停滞している場合、改めて市場を細分化して本来狙うべき顧客層を見直し、競合と差別化できる自社の強みを再定義することで、打開策が見えてきます。
具体的な活用例としては、新規事業の初期戦略設計があります。ゼロから市場を開拓する際、STP分析を行うことで「最も成果が見込める市場×ターゲット」を発見し、戦略を集中投下できます。またマーケティング成果の停滞時にも、STP分析による戦略の再構築が有効です。
「思うように成果が出ない」「どのような戦略を立て直せば良いか分からない」といった局面で、改めて市場・顧客を見つめ直すことで新たな方針が導き出せます。要するにSTP分析は、戦略に行き詰まった時の打開策としても頼りになるフレームワークなのです。
STP分析の3要素と主な分析観点
ここからは、Segmentation・Targeting・Positioningのそれぞれで、何を見て、何をそろえるかを整理します。最初は基本の枠から始め、必要に応じて列を足してください。
【STP分析の要素と主な観点の例】
| 要素 | 何を見るか | まずそろえたい情報の例 |
|---|---|---|
| Segmentation(セグメンテーション) | 市場をどう区切るか |
|
| Targeting(ターゲティング) | どの区分を狙うか |
|
| Positioning(ポジショニング) | どんな価値で選ばれるか |
|
STP分析のすぐ使えるテンプレート

以下はSTP分析の基本項目をまとめたテンプレート例です。自社の状況に合わせて自由に追記・修正しながら活用してください。
【STP分析のテンプレート例】
| 分析ステップ | 主な検討内容(項目) |
|---|---|
| 1. 事業目的・ゴール | ビジネスで達成したい目的・KPIは何か |
| 2. 自社商品・サービス | 提供中の商品・サービスと、その価値・解決策 |
| 3. セグメンテーション | 市場の細分化軸と想定されるセグメント群 |
| 4. ターゲティング | 狙うセグメントの選定(有望度、競合状況、自社適合性) |
| 5. ポジショニング | 選択ターゲットにおける自社の立ち位置・差別化ポイント |
| 6. 戦略の結論 | 導き出された戦略方針のまとめ |
上記テンプレートでは、最初に事業目的と提供サービスを整理しています。これは、STP分析の結論を事業ゴールに結びつけるために重要な準備ステップです。その上で、セグメンテーションでは市場を様々な軸で分類し(例では「企業規模」や「業界」で区切り)、次にターゲティングで最も魅力的なセグメントを選び出します。
ターゲット選定時には、市場規模や成長性、競合の数、自社のリソース適合度などを総合的に評価しましょう。さらにポジショニングでは、選んだターゲット市場内で自社が取るべき立ち位置(=他社にはない自社の強みや提供価値)を明確にします。
最後に戦略の結論として、誰に何をどう提供するかを一文でまとめれば、社内共有や施策立案に活かしやすくなります。
既存のテンプレートはネット上に無料公開されているものもありますが、自社の業界・目的に合わせて項目をカスタマイズするのがおすすめです。たとえば「ターゲットの抱える課題」や「競合の強み・弱み」など、必要に応じて欄を追加しましょう。定期的に見直して更新することで、新たな気づきや戦略のブラッシュアップにもつながります。
【公開前に確認するチェックリスト】
| 確認項目 | メモ欄 |
|---|---|
| 区分の数が説明できる範囲に収まっている | |
| 優先区分の理由が数字または根拠で示せる | |
| 差別化軸が買い手の比較軸と一致している | |
| メッセージが一言で伝わる | |
| 各施策に担当・期限・KPIが付いている |
STP分析のやり方と手順
STP分析を実施する手順は、ポイントさえ押さえれば決して難しくありません。基本はS→T→Pの3ステップですが、効果的な分析のために準備と最後の取りまとめも含めた6つのステップで考えると分かりやすいです。
以下に一般的な進め方を説明します。(※自社の状況に応じて順番を前後しても構いません)
【STP分析の手順】
- STEP1:事業の目的とゴールを明確にする
- STEP2:自社の商品・サービスを把握する
- STEP3:市場を細分化する(セグメンテーション)
- STEP4:狙う市場を定める(ターゲティング)
- STEP5:自社の立ち位置を見極める(ポジショニング)
- STEP6:マーケティング戦略のプランニングに繋げる
STEP1:事業の目的とゴールを明確にする
まず最初に、自社事業が「何のためにビジネスを行い、どんなゴールを達成する必要があるか」を整理します。STP分析は視点によって結論が複数考えられるため、最初に成功基準(KGI/KPI)を定めておくことが重要です。目的が明確であれば、後の検討で選択肢が出てきた際にも軸がぶれずに判断できます。
目的:新規獲得を増やす/対象:中小企業向けSaaSの無料プラン/判断指標:無料→有料の転換率、獲得単価
STEP2:自社の商品・サービスを把握する
続いて、自社が現状提供している商品・サービスと、その特徴や提供価値を洗い出します。それぞれ「誰の」「どんな課題を」「どう解決しているのか」を言語化してみましょう。この作業によって、自社が提供可能な価値の範囲が見えてきます。後のポジショニング検討時に「既存の製品で勝負できるのか、改良や新規開発が必要か」を判断する材料にもなります。
STEP3:市場を細分化する(セグメンテーション)
準備が整ったら、いよいよSTP分析の「S」のステップです。市場を共通のニーズや属性にもとづき細分化し、いくつかのセグメント(顧客群)に分類します。
セグメンテーションの切り口(変数)はビジネスによって様々ですが、典型的なものに以下があります。
| デモグラフィック変数(人口統計) | 年齢、性別、世帯収入、企業規模、所在地など |
|---|---|
| サイコグラフィック変数(心理・行動) | ライフスタイル、価値観、購買動機、使用頻度など |
| 地理的変数 | 都市部・地方、国内・海外などの地域差 |
| 行動変数 | 購買プロセスやベネフィット志向(何を重視して購入するか)など |
BtoBの場合は、上記に加えて「所属業界」「担当者の職種・役職」「取引規模」なども重要なセグメント軸になります。自社が持つ顧客データや市場調査レポートがあれば積極的に活用し、ニーズごとに市場をグループ分けしてください。
セグメンテーションの結果、各セグメントの特性や市場規模が明確になり、自社にとって魅力的な領域が浮かび上がります。
マーケティング戦略で成果を求められる企業の担当者に向けて、マーケティングセグメンテーションの基本から具体的なやり方までを解説する記事です。市場を細分化して顧客をいくつかのセグメント(顧客グループ)に分け、それぞれに最適な戦略を立てることで、[…]
STEP4:狙う市場を定める(ターゲティング)
細分化した複数のセグメントの中から、自社が優先すべきターゲットを絞り込みます。ターゲット選定のポイントは、「そのセグメントが十分な規模と成長性を持ち」「競合が多すぎず」「自社の強みが活かせるかどうか」です。
分析手法として、3C分析を用いて各セグメントの顧客ニーズ・競合状況・自社優位性を評価すると精度が上がります。さらに6R分析などを参考に、「市場規模(Realistic scale)」「成長率(Rate of growth)」「競合の強さ(Rival)」等の観点で候補市場を比較すると、客観的な判断材料になります。
ターゲティング戦略としては、大きく3つの型が知られています。
| 無差別型マーケティング | セグメントを分けず、市場全体に同じ製品・訴求で臨む戦略。広範囲にリーチできますが、競争も激化しやすく大量の資源が必要です。 |
|---|---|
| 差別型マーケティング | 複数セグメントそれぞれに合わせた製品やマーケティングを行う戦略。ニーズ適合度は高まりますが、セグメントごとに手間やコストが増えます。 |
| 集中型マーケティング | 特定の一つのセグメントに絞って集中投下する戦略。限られた資源でも効果を出しやすい反面、セグメント選択を誤るとリスクも高くなります。 |
自社のリソース規模や競合状況を踏まえて上記方針を決め、最終的にどの市場・顧客層を狙うかを決定しましょう。
例えば「当社は20代女性向けに集中する」「中小企業向けと大企業向けで異なる戦略を併用する」など、明文化しておくと社内認識も共有しやすくなります。
マーケティングの現場で「ターゲット設定」という言葉を耳にすることは多いでしょう。しかし、「自社の商品・サービスは誰に向けて提供するのか?」を明確にできずに悩む初心者マーケターも少なくありません。実は、マーケティングにおいて適切なターゲット設[…]
STEP5:自社の立ち位置を見極める(ポジショニング)
選定したターゲット市場で、自社が取るべきポジション(市場におけるブランドの立ち位置)を設計します。
具体的には、「顧客の頭の中にどんな印象・価値を占めたいか」を決める作業です。ポジショニングを考える際は、競合他社の提供価値やブランディングも調査しましょう。顧客視点で見た時、競合だらけの中で自社が埋もれずに際立つポイントは何かを突き詰めます。
有効な手法としてポジショニングマップの作成があります。縦軸・横軸に顧客にとって重要な評価軸(例:「価格帯」「品質レベル」など)を取り、競合商品・自社商品をマッピングすることで、市場の空白領域や過密領域が視覚化できます。例えば「高価格・高品質」「低価格・利便性」などの軸でマップを描けば、自社がどの位置を狙うべきかヒントが得られます。
競合が大手で強力な場合には、あえてその大手が手薄なニッチにポジションを取る戦略も考えられます。逆に競合製品が乱立している場合、自社ならではの独自機能やサービスを前面に出し、顧客に「〇〇と言えば自社」と想起させる差別化が必要です。自社視点だけでなく顧客視点で自社の位置付けを考えることが重要です。
マーケティング担当者なら一度は耳にする「ポジショニング」という言葉。しかし、実際に「マーケティングにおけるポジショニングとは何か」と問われると、具体的に説明できない方も多いのではないでしょうか。
ポジショニングは、自社の商品やサービス[…]
STEP6:マーケティング戦略のプランニングに繋げる
STPそれぞれの検討結果が出揃ったら、最後に全体の戦略方針としてまとめます。特に「誰に・何を・どう売るか」という形でシンプルに言語化すると、社内外で共有しやすく実行に移しやすくなります。
まとめた戦略が、最初に定めた事業目的・ゴールに沿っているかを必ず確認してください。「絞ったターゲットに本当に十分な市場規模があるか」「ポジショニングした領域で目標達成できそうか」などを再チェックし、必要なら再度分析を行います。こうしてSTP分析で導かれた戦略の方向性が定まれば、次は具体的な施策(商品開発やプロモーション計画)へと展開していきます。
以上がSTP分析の基本的な手順です。一連の流れはマーケティング戦略プロセス全体の中では「戦略設計」のフェーズに該当し、環境分析で得た知見をもとにSTPで方針策定し、その後の4P(マーケティングミックス)で施策化するといった流れになります。
STP分析の具体例
STP分析の概念や手順を理解したところで、具体例を見てみましょう。ここでは身近な業種を題材に、どのようにSTP分析によって戦略を導き出せるかをシミュレーションします。
例えばカフェ事業を新たに始めるケースを考えてみます。大まかな市場として「カフェ利用者全般」がありますが、そのままでは漠然としすぎて効果的な戦略が立てられません。
そこで市場を細分化(Segmentation)します。カフェの顧客層を想定すると、以下のようなセグメントが考えられます。
| ビジネス層 | 平日昼間にノートPCを広げて仕事をするフリーランスや会社員 |
|---|---|
| 主婦層 | 平日の日中にランチやお茶を楽しむ主婦グループ |
| 学生層 | 学校帰りや休日に友達とおしゃべりしたり勉強したりする学生 |
| 家族連れ | 週末に子供を連れて来店するファミリー |
次に、この中からターゲット(Targeting)とする層を決めます。仮に「家族連れ(子供連れの親)」に注力するとしましょう。近隣に競合が多い中で、敢えてファミリー層に特化する戦略です。
その理由として、ビジネス層向けのおしゃれカフェは既に周囲に存在する一方、子連れ歓迎のカフェは少なく競合優位性が見込める点が挙げられます。また地域柄、子育て世代の人口が多く、潜在需要も十分と判断しました。
最後にポジショニング(Positioning)です。選んだターゲット層に対し、自カフェをどのように位置付けるかを決めます。ここでは「子ども連れ歓迎のカフェ」という独自のポジションを打ち出すことにします。
具体的には、店内にキッズスペースやベビーチェアを用意し、メニューもキッズ向けセットを充実させます。他の一般的なカフェとは一線を画し、「小さな子供がいても気兼ねなく長居できる第3の居場所」としてブランド認知を図ります。このようにSTP分析を通じて「誰に」「何を」「どう提供するか」が明確になれば、コンセプトにブレない店舗運営やプロモーション展開が可能になります。
以上の例ではファミリー層向けに特化する戦略を示しましたが、同じカフェでも別の切り口がありえます。例えば「女性のひとり時間を応援する静かなカフェ」を狙うなら、ターゲットは都会で働く20〜30代女性、ポジショニングは「一人でも心地よい洗練空間」となるでしょう。このようにSTP分析によって導き出される戦略は多岐にわたり、自社の強みや競合状況によって最適解が変わります。
重要なのは、一度決めたターゲット・ポジションに沿ってサービスやマーケティングを一貫させることです。そうすることで選んだ顧客層から強い支持を得て、競合にも埋もれない独自のポジションを築くことができます。
STP分析と併せて活用したいフレームワーク
STP分析は単体でも有用ですが、他のマーケティングフレームワークと組み合わせると一層効果的です。戦略立案の全体プロセスを考えると、一般的には3C分析で市場環境を把握し、STP分析で戦略の軸を決め、4P分析(マーケティングミックス)で具体策を練るという流れが推奨されます。
また、最初の段階でPEST分析などを用いてマクロ環境を理解しておくことも有益です。ここではSTP分析と併せて使いたい主要フレームワークとして、3C分析・4P分析・PEST分析の3つを紹介します。
【併せて活用したい分析フレームワーク】
- 3C分析
- 4P分析
- PEST分析
3C分析とは
3C分析は、マーケティング環境をCustomer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの観点から分析するフレームワークです。
経営コンサルタント大前研一氏が提唱したことで広まり、現在でも戦略立案の基本手法として広く使われています。3C分析では、まず市場・顧客の動向(市場規模・成長性、顧客ニーズ、購買傾向など)を調査し、次に主要競合の特徴(シェア、強み弱み、戦略)を分析、そして自社の内部要因(リソース、強み弱み、収益構造など)を整理します。
このフレームワークによって、自社を取り巻く外部環境と内部環境を俯瞰的に捉えられるのがメリットです。STP分析と合わせて使う場合、例えばターゲット選定の際に3C分析の結果を踏まえて「市場ニーズに合致し、競合より有利に戦え、自社も対応可能なセグメントはどこか」を判断できます。
実際、3C分析→STP分析という順で行うことで、思いつきではない根拠あるターゲット戦略が立てやすくなります。STP分析に取り掛かる前段として3C分析を実施し、マーケットの全体像と自社のポジションを把握しておくと良いでしょう。
3C分析(さんしーぶんせき)とは、マーケティング戦略や事業計画を立案する際に活用される基本的なフレームワークです。Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)という3つの要素(頭文字が「C」で始まる要[…]
4P分析とは
4P分析は、マーケティング施策を検討する際に用いるマーケティングミックスのフレームワークです。Product(製品)・Price(価格)・Place(流通)・Promotion(販促)の4つの要素から、自社のマーケティング施策を総合的に設計します。
STP分析で「誰に何をどう売るか」の戦略が定まったら、次はそれを実行に移すための具体策として4P分析を行うのが一般的な流れです。
各Pの視点でチェックすべき事項は以下の通りです。
| Product(製品) | ターゲットに適した商品・サービス内容になっているか(機能、品質、デザイン、パッケージ、ブランドなど) |
|---|---|
| Price(価格) | ターゲットが受け入れやすく、なおかつ自社収益も確保できる適正価格か(割引施策、支払い方法も含む) |
| Place(流通・販路) | ターゲットが商品を入手しやすい販売チャネルか(店舗、ECサイト、代理店経由などの最適化) |
| Promotion(販促) | ターゲットに響くプロモーションができているか(広告媒体の選定、メッセージ、キャンペーン施策、SNS活用など) |
4P分析の目的は、戦略(STP)と戦術(施策)との整合性を高めることです。
例えばターゲットが経済的に余裕のない学生なら(STPの結果)、Price戦略では低価格帯や学割の設定が必要になるでしょう。同時にPromotionではSNSを使った口コミ誘導が効果的かもしれません。
このように4Pの各要素をターゲットやポジショニングに合わせて調整することで、一貫性のあるマーケティングプランが完成します。STP分析で定めた戦略を具体的なマーケティング施策に落とし込むステップとして、4P分析は欠かせないフレームワークです。
「4P分析」は、製品(Product)・価格(Price)・流通(Place)・販促(Promotion)をそろえて検討するための枠組みです。
この記事では、定義だけでなく、実務で使える手順やテンプレート、ミニ事例、注意点までを一つに[…]
PEST分析とは
PEST分析は、企業を取り巻くマクロ環境をPolitics(政治)・Economy(経済)・Society(社会)・Technology(技術)の4つの観点から分析する手法です。市場全体の動向や将来性を予測し、戦略に反映させる目的で行われます。
例えば、政府の規制強化や法律改正(Politics)、景気動向や為替変動(Economy)、人口構造の変化や消費者の価値観トレンド(Society)、AIやIoTなど技術革新の方向性(Technology)といった要因が自社ビジネスにどう影響するかを整理します。
PEST分析は市場の大局を見渡すのに適しており、STP分析の前提知識として役立ちます。特に新規事業や海外展開などでは、マクロ環境の変化がマーケットを左右するため、事前にPESTで把握しておくことが重要です。例えば、PEST分析によって「若年人口の減少」が明らかになれば、ターゲット設定時に高齢者市場へ注目するといった判断ができるでしょう。
また「新技術の普及予測」を捉えれば、それを活用した新しいポジショニングの可能性も見えてきます。STP分析はあくまで自社と顧客・競合の関係にフォーカスしたフレームワークなので、その前にPEST分析で外部環境の前提を押さえておくことで、より現実に即した戦略立案が可能になります。
「PEST分析」は、政治(Political)・経済(Economic)・社会(Social)・技術(Technological)の4切り口で、外部環境の変化を整理する方法です。市場や規制、生活者の価値観、技術進歩など、事業の外で起きる変化[…]
STP分析を活用した企業成功事例
実際にSTP分析を活用して成功した企業の事例を見てみましょう。理論を現場でどう応用するか理解するために、BtoC(消費者向け)企業とBtoB(法人向け)企業それぞれのケースを紹介します。
いずれもSTP分析により明確なターゲット戦略を打ち出し、市場で競争優位を築いた例です。
- BtoC企業例:スターバックス
- BtoB企業例:江崎グリコ「オフィスグリコ」の事例
BtoC企業例:スターバックスの事例
スターバックスはSTP分析を巧みに活用し、コーヒーチェーン市場で圧倒的な地位を確立した代表的企業です。
同社のSTP分析のポイントは、顧客のライフスタイルや潜在ニーズを深く理解し、それに合わせた戦略を展開した点にあります。
Segmentation(市場細分化)
スターバックスは年齢・職業・居住地といった基本属性に加え、「高品質なコーヒー体験を求める層」「くつろげる空間を求める層」など顧客の心理的ニーズでも市場を分析しました。10代後半〜70代まで幅広い年齢層を取り込みつつ、都市部のオフィスワーカーやノマドワーカーなど都市生活者を重要セグメントと位置付けています。
Targeting(ターゲット選定)
主力ターゲットとして「都市部で平均以上の収入を持つオフィスワーカー」を掲げ、時間帯別にも細かくターゲットを想定しました。例えば早朝は出勤前のビジネスパーソン、昼間は主婦やノマド層、夕方以降は学生や仕事帰りの会社員、週末はカップルやファミリーといったように、来店客層を細分化して捉えています。このように複数のミクロなターゲット像を設定することで、各時間帯・客層に最適なサービス提供を可能にしました。
Positioning(自社の立ち位置)
「家庭や職場でもない、第3の居場所(サードプレイス)を提供する」という独自のポジション戦略を打ち立てました。おしゃれで都会的な雰囲気の店内で高品質なコーヒーを楽しめ、長時間滞在しても快適に過ごせる空間──この付加価値によって、スターバックスは単なるコーヒー販売以上の体験を提供しました。その結果、顧客に強いブランドロイヤリティを築き上げ、「コーヒー=スタバ」と想起されるような市場ポジションを獲得しています。
このようにスターバックスは、「忙しい日常の合間にホッとできる場と体験」を提供することで差別化に成功しました。高価格帯にも関わらず支持を集めているのは、STP分析にもとづきターゲット層が求める価値を的確に提供しているからです。競合が価格やメニューで競う中、スターバックスは空間と体験のブランディングという軸で他社と一線を画しました。これはSTP分析の成果と言えるでしょう。
BtoB企業例:江崎グリコ「オフィスグリコ」の事例
次にBtoB領域の成功事例として、江崎グリコ株式会社の「オフィスグリコ」サービスを紹介します。お菓子メーカー大手の同社が、新規事業として職場向け菓子販売サービス「オフィスグリコ」を立ち上げ、市場を開拓したケースです。STP分析の視点から、このサービス誕生の経緯を見てみましょう。
Segmentation(市場細分化)
当時グリコ社は「お菓子を食べるシーン」に着目し、消費者調査を行いました。その結果、「お菓子を最も食べる場所」は家庭(約70%)で2位が職場(約20%)と判明し、職場での間食というニーズに注目しました。つまり市場を「場所」という軸で細分化し、それまで着目されていなかったオフィスでのおやつ需要というセグメントを見出したのです。
Targeting(ターゲット選定)
上記調査から、グリコ社は「オフィスで働くビジネスパーソン」を新たなターゲットとして定めました。家庭向け菓子市場は既に成熟していましたが、職場向けは未開拓のブルーオーシャンであることがわかったためです。当時は「仕事中にお菓子を食べる」という習慣自体が意外だと捉えられており、そこに新しい市場機会を見いだした形です。
Positioning(自社の立ち位置)
グリコ社は選んだターゲットに対し、「オフィスにいながらお菓子が買えるリフレッシュメントサービス」というユニークな立ち位置を確立しました。具体的には、オフィスの一角にお菓子やドリンクのボックスを設置し、社員がいつでも100円程度で自由に購入できる仕組みを導入しました。「オフィスグリコ」と名付けたこのサービスは、日本の職場における間食ニーズを掘り起こし、会社に居ながら手軽にリフレッシュできる価値を提供しました。競合が存在しない新領域だったこともあり、サービス開始後は口コミで導入企業が増え、オフィスグリコは企業向け福利厚生の一環として定着しました。
この事例では、市場細分化によって潜在ニーズの塊を見つけ出し、巧みなポジショニングでそれを事業化した点が注目されます。従来、お菓子メーカーの販路は小売店や自販機が中心でしたが、STP分析的アプローチで「職場」という新たな販路を切り開いたのです。結果、江崎グリコは菓子そのものの競争ではなく販売チャネルの革新によって競合優位を築きました。これはSTP分析を活用した新市場創造の好例と言えるでしょう。
STP分析を活用するメリット
最後に、STP分析を導入するメリットを整理します。STP分析はマーケティング戦略立案の質を高め、限られたリソースで高い成果を上げるための強力な武器です。
その主な利点として、以下の4点が挙げられます。
- 顧客ニーズを的確に把握できる
- 自社の強みが明確になる
- 競合他社との差別化が図れる
- 戦略の方向性がぶれなくなる
顧客ニーズを的確に把握できる
市場を細分化するプロセスで各セグメントの特徴やニーズが明らかになるため、「どの市場にどのような顧客がどれくらいいるか」という全体像が掴めます。
結果、自社製品にはどんな顧客層が合うのか見えてきて、具体的なペルソナ設定が可能になります。
自社の強みが明確になる
STP分析によって自社の独自性や優位性が浮き彫りになり、アピールポイントが定まります。その強みを活かせる市場を選ぶことで、競合との不毛な競争を避け、限られたリソースを最大活用した戦略展開ができます。
競合他社との差別化が図れる
ポジショニングの段階で競合製品と比較検討するため、自社ならではの価値が明確になります。その結果、顧客に対して「自社を選ぶ理由」を明快に提示でき、競合に埋もれない存在感を示せます。
戦略の方向性がぶれなくなる
「誰に・何を・どう届けるか」が明文化されるため、マーケティング施策の方向性が統一されます。組織内で共通認識を持ちやすくなり、部署ごとのバラバラな施策でメッセージが散漫になるのを防ぎます。ひいては顧客との一貫したコミュニケーションが可能になり、ブランド力向上にもつながります。
以上のようなメリットから、STP分析はマーケティングのみならず経営戦略全般にも有用なフレームワークとして知られています。
「自社はどの市場で戦うのか」「何をもって勝つのか」という根幹を定めることで、商品開発から営業戦略まで一貫性のある施策立案ができるようになります。なお、STP分析は他のフレームワーク(SWOT分析や4P分析など)と組み合わせることで、さらに包括的で実行力のある戦略策定が可能になります。
よくある質問
STP分析は、一言でいうと「市場を三段階で絞り込んで戦略を定める方法」です。具体的には、まず市場を細かく区切って(Segmentation)、その中から狙う顧客層を選び(Targeting)、選んだ顧客層に対する自社の立ち位置・強みを決めます(Positioning)。
例えば「若者向けファッション市場」をさらに細分化し(10代女性、20代女性、20代男性…など)、20代女性にターゲットを絞ったら、その中で「低価格でトレンドを提供するブランド」というように自社のポジションを定めるイメージです。これにより、「誰に・何を・どう売るか」が明確になるので、マーケティングの方向性がはっきりわかります。
一般的には、3C分析 → STP分析 → 4P分析の順番が推奨されています。まず3C分析で市場環境(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)を分析し、戦略の前提となる情報を整理します。その上でSTP分析を行って「狙う市場・顧客(Segment&Target)と提供価値(Position)」を決定します。そして最後に4P分析で、決定した戦略を具体的なマーケティング施策(製品・価格・販路・プロモーション)に落とし込む、という流れです。この順序を踏むことで、闇雲に施策を考えるのではなく、データに基づいた戦略→戦術の一貫したプランを作りやすくなります。
なお、場合によってはSWOT分析(自社の強み・弱みと機会・脅威を分析)やPEST分析(マクロ環境分析)を最初に行い、その結果を踏まえて3C→STP→4Pと進めるケースもあります。大切なのは目的に応じて柔軟に組み合わせることで、必ずしも全てのフレームワークを使わなければいけないわけではありません。
STP分析の基本手順は3ステップです。簡潔に言うと以下の通りになります。
Segmentation(セグメンテーション): 自社が参入する市場を様々な切り口で細分化します。例えば顧客の年齢層やニーズごとにグループ分けし、市場の全体像を把握します。
Targeting(ターゲティング): 細分化したグループの中から、特に注力すべきターゲットを選びます。市場規模が十分で、成長が見込め、自社の強みが活かせるセグメントが選定候補になります。
Positioning(ポジショニング): 選んだターゲットに対して、自社の商品・サービスをどんな位置付けで提供するかを決めます。他社にはない独自の売りやブランドイメージを明確にし、顧客に自社を選ぶ理由を与えるポジションを築きます。
例えば、「高級志向な30代男性」というターゲットを選んだなら、その層に響くポジショニングとして「最高品質の素材を使ったプレミアム商品」を掲げる…という具合です。以上が基本的なSTP分析の流れですが、事前に自社ビジネスの目的確認や外部環境分析をしておくと、より精度の高い分析ができます。
まとめ
STP分析は「誰に・何を・どう売るか」を明確にすることで、競争優位なマーケティング戦略を構築するための必須フレームワークです。市場を細分化し、ターゲットを絞り、自社の独自ポジションを確立することで、競合他社との差別化を図りながら顧客に響く戦略立案が可能となります。ポイントを押さえてSTP分析を行えば、これまで漠然としていた顧客像や戦略方針がクリアになり、マーケティング施策全体の整合性も高まります。
STP分析のメリットを最大限活かすには、適切なタイミングで定期的に分析を行い、市場や顧客ニーズの変化に対応することが重要です。また、SWOT分析や3C分析、4P分析など他のフレームワークと組み合わせることで、より包括的で実践的な戦略を策定できるでしょう。自社の現状を正しく捉え、最適なターゲットと方向性を見極めるために、ぜひSTP分析をマーケティング戦略に取り入れてみてください。顧客に選ばれ続けるためのヒントがきっと見つかるはずです。
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