「STP分析」は、市場を区切り(Segmentation)、狙いを定め(Targeting)、価値の置きどころを決める(Positioning)ための考え方です。
この記事では、定義だけでなく、実務で使える手順やテンプレート、ミニ事例、注意点までを一つにまとめました。
まずは全体像をつかみ、明日から実践してみましょう。
STP分析とは?
STP分析は、限られた資源で成果を出すために「どの市場の、どの人に、何を価値として届けるか」を整理するフレームワークです。
漠然と“みんなに売る”のではなく、規模や成長、需要の違いに応じて市場を切り分け、合う相手に焦点を合わせ、競合との差を明確にします。マーケティング戦略の骨組みとして、3C分析や4P設計と並んで使われることが多い基本手法です。
STP分析の目的と得られること
【STP分析の目的】
- 市場の切り分けを正確にし、ムダ打ちを減らす
- 狙う顧客像を共有し、意思決定を速くする
- 価値の置きどころを決め、一貫した訴求にまとめる
市場の切り分けを正確にし、ムダ打ちを減らす
STPの出発点は、市場を意味のある単位に分けることです。年齢や職業といった属性だけでなく、課題や利用シーン、価格感度などの違いで区切ると、同じ施策でも届き方が大きく変わります。切り分けが粗いと、広告や営業の範囲が広がる一方で効果が薄くなりがちです。先に境界をはっきりさせることで、予算や時間を有効な場所へ集中できます。
狙う顧客像を共有し、意思決定を速くする
ターゲティングでは「誰のどんな状況を想定するか」を具体的に言語化します。年齢や業種だけでなく、直面する課題、購入までの不安、選定基準といった“判断のツボ”まで共有すると、クリエイティブや提案の軸がそろいます。現場で悩みがちな「この施策は誰向けか」という迷いが減り、意思決定の速度と精度が上がります。
価値の置きどころを決め、一貫した訴求にまとめる
ポジショニングでは、競合と比べて自社が選ばれる理由を一言で示します。「最短導入」「継続サポートに強い」「データ連携が簡単」など、買い手が実際に比較する軸で表現することが大切です。価値の置きどころが定まると、Webサイト・広告・営業資料・価格設計までが一つの線でつながり、伝わり方が安定します。
STP分析の3要素と主な分析観点
ここからは、Segmentation・Targeting・Positioningのそれぞれで、何を見て、何をそろえるかを整理します。最初は基本の枠から始め、必要に応じて列を足してください。
【STP分析の要素と主な観点の例】
| 要素 | 何を見るか | まずそろえたい情報の例 |
|---|---|---|
| Segmentation(セグメンテーション) | 市場をどう区切るか |
|
| Targeting(ターゲティング) | どの区分を狙うか |
|
| Positioning(ポジショニング) | どんな価値で選ばれるか |
|
STP分析のやり方と手順
実務では、手順を決めて迷いを減らすと進めやすくなります。
次の5ステップをベースに、チームで役割と期限を決めて進めてください。
【STP分析の手順】
- STEP1:目的・対象・判断指標を決める
- STEP2:市場を切り分ける(Segmentation)
- STEP3:狙いを決める(Targeting)
- STEP4:価値の置きどころを定める(Positioning)
- STEP5:メッセージと施策に落とし込む
STEP1:目的・対象・判断指標を決める
例)目的:新規獲得を増やす/対象:中小企業向けSaaSの無料プラン/判断指標:無料→有料の転換率、獲得単価。最初に決めておくと、情報収集の幅と深さが整い、後の議論がぶれにくくなります。
STEP2:市場を切り分ける(Segmentation)
属性(業種・規模・年齢など)だけでなく、課題・利用シーン・導入障壁といった行動や心理の違いでも区分します。区分は多ければ良いわけではありません。説明できる個数に絞り、各区分の規模や成長、到達性をメモしておきます。
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STEP3:狙いを決める(Targeting)
各区分の「採算性・到達性・競合強度・成功可能性」を簡易に評価し、優先度をつけます。LTV/CACの目安、使えるチャネル、過去の勝ちパターンなど、実行のしやすさも判断に入れましょう。一次・二次の優先区分を決めると、配分が組みやすくなります。
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STEP4:価値の置きどころを定める(Positioning)
買い手が比較に使う軸で差別化を言い切ります。例)「導入の手間が少ない」「運用サポートが手厚い」「データ連携が簡単」。必要なら簡単なポジションマップ(縦横2軸)を作り、競合との位置関係を確認します。証拠となる事例や数値もあわせて用意します。
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STEP5:メッセージと施策に落とし込む
選んだ価値を一言のメッセージにまとめ、Web・広告・営業資料・料金・プロダクト改善へ展開します。各施策に担当・期限・KPIを設定し、進行表で管理します。小さく試し、数字で確かめ、必要に応じてSTPを見直します。
STP分析のテンプレートとチェックリスト
1ページで使える「STPキャンバス」を用意しました。コピーして、そのまま社内でお使いください。公開・共有を前提とした簡易版です。
【1ページで使える「STPキャンバス」】
| セクション | 記入のヒント |
|---|---|
| 目的・対象・指標 | 例:新規獲得増/無料プラン/転換率・獲得単価 |
| Segmentation | 区分の条件(属性・課題・シーンなど)、各区分の規模・成長・到達性 |
| Targeting | 優先度(採算性・到達性・競合強度・成功可能性)、狙う区分の理由 |
| Positioning | 差別化軸、一言メッセージ、証拠(事例・数値) |
| 主要施策 | Web/広告/営業資料/料金/プロダクト。各施策の狙いを1行で |
| KPI・担当・期限 | 例:転換率+3pt/広告:Aさん、資料:Bさん/来月末 |
【公開前に確認するチェックリスト】
| 確認項目 | メモ欄 |
|---|---|
| 区分の数が説明できる範囲に収まっている | |
| 優先区分の理由が数字または根拠で示せる | |
| 差別化軸が買い手の比較軸と一致している | |
| メッセージが一言で伝わる | |
| 各施策に担当・期限・KPIが付いている |
STP分析で使えるデータソースと指標(迷わないために)
初回は「区分の規模・到達性」「優先区分の採算性」「差別化の裏付け」の3点をそろえるだけでも十分です。さらに精度を上げたい場合は、次の表を参考に情報源を広げてください。
【データソースと主な指標の例】
| 観点 | 主なデータソース | 指標・項目の例 |
|---|---|---|
| Segmentation |
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| Targeting |
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| Positioning |
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活用事例
実際の進め方を短いケースで確認します。数字や手順は簡略化していますが、流れの参考になります。
B2C:フィットネスアプリの有料転換を高めたい
セグメンテーションでは「運動習慣の有無」「目的(ダイエット/体力維持)」「利用時間帯」で区分。ターゲティングは“平日夜に短時間で運動したい初心者”を優先にしました。ポジショニングは「最短10分、動画の迷いゼロ」と定義し、初回の導線とメニュー提案を最短化。広告とアプリ内のメッセージも同じ言葉で統一し、無料→有料の転換率をKPIとして追いました。
B2B:会計SaaSの中小企業向け拡販
セグメンテーションは「従業員規模」「会計担当者の体制」「既存ソフトの種類」で切り分け。ターゲティングは“専任不在でクラウド移行を検討中”の区分を最優先に。ポジショニングは「移行も仕訳も“はじめて”にやさしい」とし、移行支援とチャットサポートを前面に出しました。Webの導線、営業資料、価格プランまでを同じ軸で見直し、獲得単価と転換率で効果を確認しています。
STP分析の注意点とよくある失敗
区分を細かくしすぎると、検証に必要なデータやコストが足りなくなります。説明できる数に絞り、優先順位を明確にしてください。
また、差別化軸が買い手の比較軸とずれていると、良いメッセージでも効果が出にくくなります。
最後に、STPは一度決めたら終わりではありません。施策の結果を数字で確認し、前提がずれてきたら区分やポジショニングを見直しましょう。
STPと他フレームの違い・組み合わせ方
3C分析で環境と自社の状況を把握し、STPで狙いを絞り、4Pで具体策を設計します。SWOTは、3CやSTPで集めた事実を要約し、方向性を確認する場として有効です。ポジショニングマップはSTPの補助ツールとして役立ちますが、軸は必ず買い手が比較に使う基準を選んでください。
よくある質問
- Q:STP分析とは?
- A:市場を分け(S)、狙いを定め(T)、価値の置きどころを決める(P)ための整理方法です。
- Q:テンプレはありますか?
- A:本記事の「STPキャンバス」をそのまま使えます。必要に応じて列を追加してください。
- Q:BtoBでも有効ですか?
- A:有効です。区分の切り方を“課題や導入体制”の違いに寄せると進めやすくなります。
まとめ
STPは、限られた資源で成果を出すための“選ぶ”フレームです。区分は説明できる数に絞り、優先区分の理由を数字または根拠で示します。差別化軸は買い手の比較軸に合わせ、メッセージは一言で言い切ります。各施策に担当・期限・KPIを付け、結果を見て更新してください。最初は1ページのキャンバスから始めると、無理なく進められます。


